近くで撮影したイマーシブビデオは演者をより身近に感じさせることを心理実験により確認

近くで撮影したイマーシブビデオは、演者をより身近に感じさせる

株式会社MESONと株式会社博報堂DYホールディングスの研究開発部門であるマーケティング・テクノロジー・センター(MTC)は、共同研究において、180°イマーシブビデオ(以下、イマーシブビデオ)における撮影距離が、体験者の「その場にいる感覚」と、コンテンツ内の演者への心理的な近さに与える影響を検討する心理実験を実施しました。

本研究では、STU48によるライブパフォーマンスをイマーシブビデオとして撮影し、演者に近い距離から撮影した映像と、離れた距離から撮影した映像の2つの体験を比較しました。その結果、近い距離から撮影した映像では、体験者が「あたかもその場にいる」と感じやすくなり、コンテンツ内の演者との心理的な距離感が縮まることが示されています。

この結果は、イマーシブビデオにおける撮影距離が、単なる画角や被写体の大きさの違いだけでなく、体験設計における心理的・情動的側面に影響を及ぼし得る重要な設計変数であることを示唆しています。

研究の概要

XR、特にイマーシブビデオは、従来の2D平面映像とは異なり、体験者が映像内の空間に入り込んだように感じられるメディア形式です。ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を介して体験することで、視聴者は映像空間の中に自分の視点が置かれているように感じます。

本研究では、STU48に撮影協力を得て、4期研究生による「出航」ライブパフォーマンスを対象に、撮影距離の異なる2種類のイマーシブビデオを制作しました。近距離撮影映像(高プレゼンス条件;センターポジションの演者から1,200 mm)と遠距離撮影映像(低プレゼンス条件;センターポジションの演者から7,600 mm)では、同一楽曲・同一演者・同一振付・同一会場を用い、主な違いは撮影カメラの位置だけとなるように設計されています。

実験には、STU48に関心を持つ24名が参加しました。参加者は、近距離撮影映像条件と遠距離撮影映像条件の両条件の映像をApple Vision Proで体験し、体験前後の演者への心理的な近さや、プレゼンスに関する評価を行いました。映像の体験順序は参加者間でカウンターバランスが取られています。

高プレゼンス映像

主要な結果

1. イマーシブビデオでは、撮影距離が「見る位置」ではなく「体験する位置」になる

通常の映像では、カメラを近づけることは、被写体を大きく映すための演出として捉えられます。一方、Apple Vision Proなどのヘッドマウントディスプレイで体験するイマーシブビデオでは、カメラの位置が体験者自身の視点位置として感じられます。そのため、撮影距離は「対象をどう見せるか」だけでなく、「体験者が対象に対してどの距離にいるように感じるか」を左右することが明らかになりました。

2. 近い距離で撮影した映像では、「その場にいる」感覚が高まった

演者に近い距離から撮影した映像では、離れた距離から撮影した映像に比べて、体験者が「映像空間を自分がいる場所として感じる感覚」のスコアが高まり、その感覚に関連する複数の下位指標でも、有意に高い値を示しました。

3. 演者との心理的な近さも、近い距離で撮影した映像では大きく上昇した

体験前の演者に対する心理的な近さのスコアを基準として、体験後の変化量を比較したところ、高プレゼンス条件の体験後は、低プレゼンス条件の体験後よりも、演者との心理的な近さが有意に大きく上昇しました。このことは、イマーシブビデオにおける撮影距離の設計が、心理的・情動的側面に影響し得ることを示唆しています。

主な研究結果

今後の展望

今回の研究成果を踏まえ、MESONと博報堂DYホールディングスは、イマーシブビデオやXRを活用し、新たな顧客体験の価値を高める方法をさらに探究していく予定です。

物理的に現地へ足を運ばなくても、コンテンツや演者を身近に感じられる体験は、ライブエンターテインメント、スポーツ、観光、展示、教育、ブランド体験など、幅広い領域への応用が期待されます。両社は今後も、テクノロジー、生活者理解、体験設計、実装検証を掛け合わせながら、コンテンツやブランドと生活者の新たな関係性を生み出す研究・開発に取り組んでいくとしています。

論文・ホワイトペーパーについて

本実験の結果は論文にまとめられ、「Enhancing Presence, Deepening Fan Intensity: How Presence in Immersive Video Shapes Psychological Closeness to Performers」のタイトルで、2026年6月8日にarXivに公開されました。

また、日本語版の抄訳については、MESONのコーポレートサイトにホワイトペーパーとして掲載されています。

論文では、今回のプレスリリースで紹介された結果に加え、ファン層(ライトファンとコアファン)の違いも要因として扱い、混合分散分析、探索的因子分析などの結果についても、より専門的な観点から詳述されています。

論文、ホワイトペーパーの本文は以下のリンクよりご確認ください。

関連企業

株式会社MESON

「まなざしを拡げる」をパーパスに掲げ、XRとAIを融合させた空間インテリジェンス技術の社会実装を目指すスタートアップです。XRとAIの融合によって生まれる新しい体験価値の創出を支援し、課題探索の初期段階から企業と伴走しています。PoCにおいては、体験効果を定量的に計測できる仕組みを備え、技術と事業の両面から実装と検証を支援しています。
https://www.meson.tokyo/

株式会社博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター

生活者データ、先端テクノロジー、マーケティングサイエンスを活用し、企業のマーケティング活動および生活者体験の高度化に向けた研究開発を行っています。
https://hakuhodody-mtc.com/

株式会社コンセント

「デザインでひらく、デザインをひらく」をミッションに、企業や行政と伴走し活動を支えるデザイン会社です。デザイン経営や事業開発、ブランディング、クリエイティブ開発等において、サービスデザインの視点と技術を生かし戦略策定から実行まで支援しています。またデザインの知を広く共有し、生活者一人ひとりがデザインの視点を身につけ、問題解決に役立てられる社会となることを目指して活動しています。
https://www.concentinc.jp/

株式会社CRAZYTVクリエイティブ

最新鋭の技術で、映像と音響表現の可能性を追求する総合映像プロダクションです。企画から制作までワンストップで対応可能な体制を完備しています。常に時代の先を見据え、次世代の新たな映像体験を世界へ発信し続けています。
https://crazycr.jp/

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